2020年12月23日水曜日

ドイツ語の長い複合名詞

ドイツ語を学んでいて最初に戸惑うのが、やたらと長い複合名詞ではないでしょうか。

ドイツの辞書 DUDEN で一番長い見出し語は、現時点では44文字です。

Aufmerksamkeitsdefizit-Hyperaktivitätsstörung(注意欠陥多動障害、ADHD)

DUDENコーパスでは、2014年当時、以下に示す化学分析法の名称が40文字で第7位でした(現在は第10位までに入っていません)。

Hochleistungsflüssigkeitschromatographie(高速液体クロマトグラフィー、HPLC)

より高性能の HPLC である UHPLC/UPLC では、語頭に Ultra- を付けて45文字に増えます。

Ultrahochleistungsflüssigkeitschromatographie(超高速液体クロマトグラフィー、UHPLC/UPLC)

住友化学が出願した DE 103 26 536 A1 では、語尾に「装置」 -vorrichtung を付けて51文字になっています。

Hochleistungsflüssigkeitschromatographievorrichtung


溶接法の名称では、工作機械メーカーのカタログに42文字のものがありました。

Hochgeschwindigkeitslaserauftragsschweißen(高速レーザ肉盛溶接)

辞書の見出し語としてそのまま採録されていない場合、構成要素ごとに分割して、それぞれの意味を確認してから、全体としての意味を考えなければなりません。

翻訳していると、こんなに長くて苦労するのに同じ1ワードの料金なのか、と思うこともありますが、長い複合名詞の用例を集めることも楽しみたいと思います。

2020年11月26日木曜日

JLPT Test – Aufbau und Tipps

Am 6. Dezember findet der Japanese Language Proficiency Test (JLPT) statt. Normalerweise wird dieser Test in Japan zweimal jährlich abgehalten. Da der erste Termin im Juli dieses Jahres aufgrund der Corona-Pandemie ausgefallen ist, handelt es sich bei dem Test in zwei Wochen nun um den einzigen Test-Termin im Jahr 2020. In Japan wird der Test am 6. Dezember wie geplant abgehalten. Normalerweise wird der JLPT auch in mehreren deutschen Städten, in der Schweiz und in Österreich abgehalten. Beim Termin im Dezember 2020 kann man im deutschsprachigen Raum allerdings nur am Teststandort in Düsseldorf antreten.

Bei der Anmeldung zum JLPT muss man sich für eine der fünf Niveaustufen N1 bis N5 entscheiden, wobei N1 die höchste Stufe ist. Persönlich habe ich nur die Prüfungen zu den Niveaustufen N2 und N1 abgelegt und will darüber berichten. Der JLPT N2 gilt als Voraussetzung für eine Anmeldung an vielen japanischen Universitäten und eröffnet auch auf dem japanischen Arbeitsmarkt viele Chancen. Die meisten japanischen Firmen verlangen zumindest einen positiven Abschluss des JLPT N2, manchmal auch des JLPT N1. Gelegentlich hilft ein positiver Abschluss des Niveaus N3 ebenfalls bei der Jobsuche. Die Niveaustufen N4 bzw. N5 werden hingegen bei Stellenausschreibungen normalerweise nicht erwähnt.

Zwischen den einzelnen Niveaustufen besteht ein relativ großer Unterschied. Die Prüfung zum JLPT N2 konnte ich nach meinem Bachelorstudium der Transkulturellen Kommunikation positiv ablegen. Zum JLPT N1 bin ich dann erst drei Jahre später angetreten und lebte zu diesem Zeitpunkt bereits über zwei Jahre in Japan.

Eine der größten Herausforderungen beim höchsten Niveau, dem JLPT N1, ist der Zeitdruck, insbesondere bei der Leseaufgabe des Tests. Vor allem Japanischlernende aus Ländern, in denen keine chinesischen Schriftzeichen verwendet werden, haben oft Probleme, die nötige Lesegeschwindigkeit und das Verständnis für den Ausgangstext zu erreichen. Japanischlernenden, die ihre Lesegeschwindigkeit erhöhen wollen, kann ich nur empfehlen, möglichst viel zu lesen. Zur Vorbereitung auf den JLPT eignen sich besonders gut japanische Zeitungsartikel, die online in großer Zahl abrufbar sind. Außerdem ist das Lernen mit wissenschaftlichen Texten sehr hilfreich. Persönlich habe ich oft Nikkei Science, die japanische Version des Scientific American, gelesen.

Den Teil zum Hörverstehen beim JLPT N1 habe ich persönlich als nicht besonders anspruchsvoll empfunden. Lernende, die nur wenig Zeit zur Vorbereitung auf den JLPT N1 haben, sollten sich daher eher auf den Lese- und Grammatik-Teil konzentrieren. Zur Vorbereitung des Grammatik-Teils ist wahrscheinlich die bekannte Reihe Kanzen Master am besten geeignet. In dieser Reihe existieren jeweils einzelne Bücher für die verschiedenen Test-Teile. Will man sich auf alle Test-Teile vorbereiten, müsste man somit fünf Bücher (Grammatik, Leseverstehen, Kanji, Sprachschatz und Hörverstehen) kaufen. Persönlich finde ich das Buch zur Grammatik am wichtigsten und habe sowohl für den JLPT N2 als auch für den JLPT N1 nur das Grammatik-Buch der Reihe Kanzen Master verwendet. Um sich an das Format des Tests zu gewöhnen, sollte man zusätzlich noch einige Testaufgaben der vergangenen Jahre durcharbeiten.

All jenen, die im Dezember antreten, wünsche ich gutes Gelingen!

Nikkei Science

https://www.nikkei-science.com/

Vergangene JLPT Tests

https://www.jlpt.jp/samples/sampleindex.html 


2020年11月16日月曜日

Genussmilchsäure を機械翻訳で訳すと

 前回の記事で紹介した Genussmilchsäure 食品用乳酸について、よく話題になる機械翻訳の Deep-L と Google を使って、いずれも無料版で和訳・英訳を試してみました。

検証日:2020年11月16日日本時間16時頃

入力したドイツ語の単語:Genussmilchsäure

出力結果:(1) Deep-L            (2) Google翻訳

 日本語 乳酸            プレジャー乳酸

 英語  Lactic acid         Pleasure lactic acid

    (別の訳語一覧)

     Edible lactic acid

     Lactic acid for consumption

この単語に限って言えば、どちらも使えないという結論になります。

Deep-L で和訳が「乳酸」と表示されたとき、「Genuss はどこに行った?」と疑問に思う人ならば、さらに調べようとするでしょうが、そのまま信じる人もいるかもしれません。

また、Google の「プレジャー乳酸」は、Genuss の意味を無理やり含めたものの誤訳です。

それでも Google 翻訳を過大評価する人ならば、「プレジャー乳酸という物質があるのだ」と信じてしまうかもしれません。

Deep-L では、英語の「別の訳語一覧」に Edible lactic acid が出ているので少しはましかもしれません。

この出力結果は、Deep-L が対訳コーパスで学習していることを示唆するものでしょう。

それでも、和訳を調べている人が、英訳も表示させてダブルチェックすることはほとんどないと思われます。

これまでも指摘されているように、機械翻訳を使うには、機械翻訳の誤訳を判断できるだけの基礎的な語学力が必要でしょう。

2020年11月9日月曜日

Genussmilchsäure (食品用乳酸)

ドイツ語和訳では、通常の独和辞典には載っていない単語に毎日出会います。

工作機械メーカーのサイトに独英日の用語集が公開されていることもありますが、その分野専門の独英辞典でも見つからないこともあります。

そのようなときは、ドイツ語の造語法を理解した上で、既存の単語を組み合わせて意味を解釈してから、ふさわしい日本語表現を考えることになります。

参考書として2点紹介します。

1) 「ドイツ語文法シリーズ7 語彙・造語」、野入逸彦、太城桂子著、大学書林

2) 「造語法で増やすドイツ語ボキャブラリー」、森涼子著、白水社

今回はビール醸造法の特許明細書に出てきた複合語の Genussmilchsäure を紹介します(DE 10 2019 118 935 A1)。

このままでは独和辞典には載っていないので、Genuss + Milchsäure と分けて考えます。

まず、後半の名詞 Milchsäure は、普通の独和辞典にも載っていて「乳酸」です。

前半の Genuss を調べると、「味わうこと、飲食すること、賞味」とあります(小学館独和大辞典第2版)。

pH調整用に加える食品添加物ですので、仮に食品用乳酸と和訳してみます。

次に、この「食品用乳酸」で検索してみると、食品添加物の名称として使われていることが確認できました。

また、「食品グレード乳酸」も使われていますが、これは英語の edible-grade lactic acid 由来と思われます。

Genussmilchsäure よりは Milchsäure für Lebensmittel の方がわかりやすい「やさしいドイツ語」と思いますが、複合語にして1語で書く方がドイツ語らしいとも言えます。

2020年5月1日金曜日

DeepL でドイツ語の化合物名を和訳してみました

DeepL という機械翻訳が話題となっています。
ドイツ語の化合物名がどのように和訳されるのか試してみました。

化合物名は、DE102018003995A1 から採用しました。
以下、D: は DeepL、G: は Google の結果で、注目点を赤色にしてあります。

1) 1-Fluor-4-((4-methoxyphenyl)ethinyl)benzol

D: 1-フルオロ-4-((4-メトキシフェニル)エチニル)ベンゾール

G: 1-フルオロ-4-((4-メトキシフェニル)エチニル)ベンゼン

ドイツ語の Benzol は、日本語名称では「ベンゼン」のみです。
DeepL に Benzol のみを入力すると、正しく「ベンゼン」と出力しました。
Fluorbenzol も「フルオロベンゼン」と正しく出力しました。

ベンゼン誘導体の名称をいくつか入力して、正しく「ベンゼン」と出力するようになってから、再度 1-Fluor-4-((4-methoxyphenyl)ethinyl)benzol を入力すると、正しく「…ベンゼン」と出力しました。

これは学習効果が現れたものと思われます。

ちなみに、独和辞典の大半は、まだ「ベンゾール」を載せていて、古い情報のままです。
人間翻訳者も、辞書を鵜呑みにせずに、最新の情報に更新しましょう。

2) 6-Fluor-2-(4-fluorphenyl)-1,3-bis(4-methoxyphenyl)azulen

D: 6-フルオロ-2-(4-フルオロフェニル)-1,3-ビス(4-メトキシフェニル)アズレン

G: 6-フルオロ-2-(4-フルオロフェニル)-1,3-ビス(4-メトキシフェニル)アズレン

これは問題ありませんでした。

3) (((4-Fluor-2-(2-fluorphenyl)azulen-1,3-diyl)bis(4,1-phenylen))-bis(oxy))bis(tertbutyldimethylsilan)

D: (((4-フルオロ-2-(2-フルオロフェニル)アズレン-1,3-ジイル)ビス(4,1-フェニレン)-ビス(オキシ)ビス(tertbutyldimethyllsilane)

G: ((((4-フルオロ-2-(2-フルオロフェニル)アズレン-1,3-ジイル)ビス(4,1-フェニレン))-ビス(オキシ))ビス(tertブチルジメチルシラン

本来は ..(tert-butyldimethylsilan) とハイフンが必要です。

DeepLでは、ハイフンが足りないことを判断できず、和訳せずに、なぜか英語風に最後に -e を付けて、しかも ..methyll.. と増えています。

Google では、これまでの情報蓄積のおかげなのか、ハイフンなしでも区別してカタカナ表記にしています。

完ぺきではなくても、以前のような表記の崩れ方はしないため、ポストエディットは楽になったと思います。

2020年3月24日火曜日

中性名詞Herz(心、心臓)の特殊な格変化

中性名詞 Herz (心、心臓)は、特殊な格変化をする名詞として、ドイツ語の文法書では必ず紹介されています。

以下に Herz の格変化を定冠詞と共に示します。
左側は、一般的に使われる格変化です。
右側は、「心臓」の意味のときに医学分野で伝統的に使われる強変化です。

  通常の格変化  医学で使う格変化(心臓)
1格 das Herz    das Herz
2格 des Hezens  des Herzes
3格 dem Herzen  dem Herz
4格 das Herz    das Herz
複数 die Herzen   die Herze